北海道交通・物流連携会議物流WG3回目 有識者3人が提言「トラック輸送のデータ不足」

北海道交通・物流連携会議の物流対策ワーキンググループ(座長・岸邦宏北海道大学大学院工学研究院准教授)の3回目の会合が1月30日、ホテルポールスター札幌で開かれ、岸座長、北海道大学公共政策大学院の石井吉春特任教授、北海商科大学大学院商学研究科の相浦宣徳教授の有識者3人がそれぞれ北海道の交通・物流についての提言を述べた。
3教授とも、「客観的な分析の基礎となる物流のデータが不足している」ことで問題意識が一致し、とりわけ「トラック輸送に関してのデータが課題」として、分析基盤を整備するよう対応を促した。

岸座長は、「戦略的選択アプローチ」という手法を用いて「北海道の持続可能な物流体系」について分析し、「北海道新幹線での貨物新幹線の導入の是非」「在来線鉄道貨物の存続すべき区間」「整備すべき高規格幹線道路」「輸送力を増強すべき港湾」といった論点について、「輸送効率性」と「労働力」の観点から考察した結果を発表した。
「輸送効率性」の観点では、「貨物新幹線を導入」「石北本線を存続」「帯広・釧路の鉄道貨物を存続」「平行在来線を廃止」「高規格幹線道路は主要路線のみを整備」「釧路港の輸送力を増強」といった組み合わせが「より短時間・低コストで輸送できる」効果があると主張した。
また、「労働力」の観点では、「貨物新幹線を導入しない」「石北本線を廃止」「帯広・釧路の鉄道貨物を廃止」「平行在来線を存続」「高規格幹線道路は全線を整備」「釧路港の輸送力を増強」といった組み合わせが効果的と主張した。
ただ、「限られたデータや前提条件での分析のため、更なるデータの精査と分析の精緻化が必要」と留意する必要があるとした。

石井教授は「北海道の物流の大きな課題は、季節繁閑と片荷構造に収斂し、この課題をこれまではJR貨物が支えてきた経緯がある。この構造の転換こそが、物流に係る設備利用率の向上などを通じた北海道物流の安定化と効率化にとって不可欠」とし、「ピーク時の料金適正化」や「輸送量の平準化」を進めるよう主張。
また、JR北海道の経営持続性の確保にむけて、「JR貨物の線路使用料の増額・貨物調整金などによる補填」「新幹線の高速化」が必要だとし、「新幹線高速化の便益の方が貨物利用の便益より高いとみられ、高速化できない場合、JR北海道の経営に深刻な影響が続く。青函共用走行問題の解決に向けては、船舶輸送へ相当量移行するしか考えられない状況で、大部分の貨物を青函、苫八航路などの区間でフェリーに移行することが現実的ではないか。早急に移行準備を進めていく必要がある」と述べた。

相浦教授は、北海道の物流が抱える様々な課題について、「生産者、消費者、物流事業者のそれぞれが輸送品目別、チャネル別、地域別などで『望ましい』『許容できる』といった観点から解決策について評価し、選択していくことが有効と考える。その際、既存の輸送方法、コスト、タイムスケジュール、輸送品質に近い形を確保しつつ、維持できるようにしていく必要がある。物流業界からは、『このような形が望ましい』『ここまでなら許容できる』といった物流のあり方について情報提供をしてほしい。こういったことの積み重ねによって、よりよい解決策に迫ることができる」と述べた。
また、「サプライチェーンを構成する『結節点』『ネットワーク』それぞれの処理可能量の上限を明確化し、生産者・消費者・物流事業者の『望むべき形・許容できる形』を組み合わせるように考えることで、あるべき物流システムが導出できる」と主張した。

今後の課題として、岸座長は「北海道の物流体系を客観的・定量的に評価する分析はこれまで行われておらず、不明なデータの捕捉が課題となる。『トラックドライバーが何人いるのか』ということすら正確にわからないのが現状」とし、石井教授も「物流は本当にデータの捕捉が難しく、限られた調査によってしか数字を把握できない」と述べた。
相浦教授も「物資の流動状況について、当事者の業界が責任を持って示してほしい。とりわけトラック運送業界は、必死になって取り組んでほしい。頭を使い、汗をかいてデータを拾う必要がある」と強調した。

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