北ト協は3月19日、ホテルポールスター札幌で「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたセミナー」を開催した。
奈良幹男会長(月寒運輸)は、「自動車運転者の有効求人倍率が高まり、5倍という地域もある。こうなるとほとんど採用ができない環境といえる。業界一丸となり、他産業と比べ『労働時間が1〜2割長い』『給与の時間単価が2〜3割低い』といった現状を改善し、労働力確保に真剣に取り組む必要がある。これは荷主の協力がなければ解決に向かわない」と訴えた。
日通総研の大島弘明取締役が「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン及び事例紹介」と題して講演。
長時間労働の原因は「出荷時間の遅れ」「配車指示が遅い」「配車指示が突発的」「短すぎるリードタイムの要求」「荷役時間の長さ」「荷待ち時間の発生」「コスト削減のための一般道走行」等に整理できるとし、「幹線輸送と集荷配送の分離」「集配先の集約」「発注量の平準化」「モーダルシフトと高速道路利用」といった同ガイドラインに示してある取引環境・長時間労働改善に向けた具体的な取り組み事例を紹介した。
また、北海道で過去2年間行われたパイロット事業の内容を解説し、昨年度実施された「札幌市中央卸売市場での青果輸送」についてのパイロット事業では、「市場内で独自規格のパレットが長い間使われているため、市場用パレットへの手積み・手降ろしの作業が発生し、時間と労力がかかっていた。一部パレットを利用した一貫輸送のトライアルを進めたが、実用化に向けては『パレットの費用負担を誰がするのか決まらない』『発着荷主間でのパレット規格の統一化が進まない』といったことから、これまでの慣習を変えるのが難しかった」と報告。「今後も手荷役を続けていくのか、優先順位を見直す時期にきている」と述べた。
北海道は他の地域と比べ、車両の大型化が進んでおり、1人のドライバーでより効率的に多くの貨物を運べるシステムの構築の可能性は高いと指摘し、シャーシの航送や中継輸送などの事例を挙げた。「改善に向けて費用のかからない取り組みもある。無駄に手待ちしている車両の発着時間を調整するだけで労働時間短縮につながる事例もある。荷主は今まで『必ずしも必要ではないが、言えば運送事業者が対応してくれた』ということで、慣習になっている作業環境もあるはず。『人を採用できないと、荷主に対して輸送サービスの提供ができない』ことになるので、働き方改革・生産性向上に向け、自負をもって交渉を行ってほしい」とし、「運送事業者から荷主に対し改善提案を行う際にこのガイドラインを活用してほしい」と強調した。
このほか、北海道運輸局自動車交通部貨物課の増田禎士課長補佐が国交省、厚労省、経産省、農水省の連名でまとめられた「トラック運送サービスを持続的に提供可能とするためのガイドライン」の概要を説明。「労働力不足により、物流が機能しなくなる恐れがある。コンプライアンス違反を防ぐには、荷待ち・荷役時間の長時間化の抑制や、高速道路等の利用による運転時間の短縮が必要。こういった条件改善に向けて、荷主と膝詰めで話し、合意形成するためのツールとしてガイドラインを活用してほしい」と述べたほか、「荷主との共通理解を促すためには、コスト分析が必要」とした。
北海道労働局労働基準部監督課の鈴木芙美恵労働時間管理適正化指導員が「働き方改革関連法に関するハンドブック」を紹介し、同関連法のうち、「時間外労働の上限規制の導入」「年次有給休暇の確実な取得」に関して説明を行った。