北ト協は7月22日、北海道トラック総合研修センターで水産部会大会を開催し、道内各地区から運送事業者と水産荷受事業者が参加、今期の事業計画や各地区の水産水揚げ量などを報告したほか、札幌市中央卸売市場におけるパレット輸送を中心とした問題点について活発な意見交換が行われた。
川口重春部会長(船泊物流)は「漁獲量は近年減少傾向が続いており、今後も不良が予測される。運送業界は、安全・環境対策のコスト負担、長時間労働の削減、ドライバー不足など厳しい状況だが、トラック業界は市民生活・産業を支える基盤産業であり、更なる輸送の効率化・適正運賃の収受を推進していく必要がある」と挨拶を述べた。
同部会の今年度の事業計画は「運輸局と協力した札幌・苫小牧TSで過積載運行防止街頭キャンペーンの実施」「札幌中央卸売市場分科会で荷主懇談会の開催」「各地区で荷主懇談会等の開催」などと報告されたほか、平成30年の道内の漁業生産高の速報値について、生産量は前年比19%増の101.8万㌧だったものの、生産額は同2%減の2732億円と3年の減少となったと報告された。
北海道の水産物流通の効率化に向けての意見交換では、事務局が札幌市中央卸売市場に関係する運送業界・卸業者・荷扱業者の3者のそれぞれの現状と要望を報告。
運送業界からは「到着時間の平準化」「市場内に屋根と荷卸作業場の整備し、スムーズで衛生的な荷卸をすべき」「中継貨物用の対応場所の確保」「長時間労働の抑制など労働環境の改善」などを要望しているとした。
卸業者からは「トラックの延着が多いので改善してほしい」「荷卸し時間削減のため、箱車後部の荷物をパレット積みにしてほしい」「パレチゼーションの実施」「市場内に屋根と荷卸作業場の整備しスムーズで衛生的な荷卸をすべき」といった要望があり、荷扱業者からは「市場内で荷物を運搬するねこ車の使用を避け、パレット使用すべき」といった声があがっているとそれぞれ報告された。
これを受けて参加した部会員からは「トラックの延着が常態化しているという話があったが、運送側としては指定時間内に市場内に着いている。荷卸しに時間がかかっており、これは運送側の責任ではないのではないか。このあたりの主張をしっかりと行うべき」といった意見があがった。
パレット輸送に関しては、「ドライバーの負担を考えれば、パレット化が進むことが望ましいが、空パレットの回収が難しい。地方からの空パレットが市場内に山積みになっており、市場は処理に困っていると聞いている」「レンタルパレットを活用するとコストがかかるが、誰が負担をするかという話もできていない」といった意見が出た。
また、「着荷主がパレット化を望んでいるが、ただパレットに積めばいいという話ではない。荷受側が検品などで手間と時間がかかるようならメリットが少ない。荷受が検品せずに受け取れる形があればいいが、出荷の際に、魚種別、サイズ別などに分けることができるのか。また、その場合、パレットへの積載が十分にできるのか。パレット化を進めることで本当に無駄がなくなり、効率化につながるかが問題で、こういった問題を考えると、そう簡単には進まないのではないか」「パレット化は運送業界・卸業者・荷扱業者の3者で話をしていても進まない。発荷主がパレット化に協力してくれるようにならなければ、実現しないのではないか」といった意見があがった。
このほか、「荷受から『トラック後部の荷物をパレット積みにしてほしい』という要望があることを今初めて聞いた。そもそも札幌市中央卸売市場には、中継輸送の分を除いて、パレットで運んではいけないと思っており、市場でフォーク荷役ができるという認識がない。市場ではねこ車でしか受け付けないと思っている。このような認識の運送事業者が多いはず。着荷主の要望が我々まで伝わっていない」との意見も出た。
同市場への水産物輸送は、平成29年度の「北海道トラック輸送における取引環境・労働時間改善地方協議会」のパイロット事業に選ばれ、その際、「①運行計画の難しさにより拘束時間が長時間化している、②中継輸送が必要なことから拘束時間が長時間化している、③市場での手待ち時間が発生している、④施設が狭く荷卸し作業が困難、⑤水揚げや生産の時間から輸送までの時間的な余裕がない、⑥輸送計画・輸送需要が天候に左右される」といった課題が確認された。
これらの具体的な改善策として、「①発荷主と運送事業者の連携による運行計画の見直し(集荷時間厳守・定時刻出発へのルール化、2日運行から3日運行への変更)、②荷受作業の効率化に向けた協力体制の構築(発荷主からの事前出荷情報の徹底、ねこ車から現代的な台車やターレットなどへ荷役設備の変更)、③中継貨物の輸送効率化への対応(市場隣接地に中継貨物のための作業スペースの新設)、④市場に対する施設改善の要請(水産棟の拡大、荷受スペースの上屋の設置、通路の増設)⑤契約の書面化の推進」などがあげられた。
パイロット事業では、「発荷主、運送事業者、着荷主、荷受作業会社が一体となってコンプライアンスの厳守を前提とし、ドライバーの拘束時間の短縮に向けた輸送システム」を目指し、一部対応を行うことで、「返路貨物の確保により3日運行に変更し、16時間超えの拘束時間をクリア」「積荷明細の事前FAXの割合増加により、従前より10%のドライバーが30分間の手待ち時間を短縮」などの成果を確認したものの、今後の課題として「改善基準告示の順守を基本に出荷締切時間を設定」「積荷明細の事前FAXの割合アップ・送信様式の簡素化」「市場側での荷卸し時間の延長」「市場隣接地などでの中継貨物スペースの確保」などとまとめた。
当時と比べて状況は大きく変わっておらず、札幌市中央卸売市場における水産物輸送の効率的な物流体制の構築に向けては、抜本的な改善が進んでいないことが確認できた。