「北海道・物流・鉄路」セミナー JR九州初代社長・石井幸孝氏 新幹線物流についての議論訴える

北海道運輸交通研究センター、北海商科大学、北海道新聞は8月2日、道新ホールで「北海道・物流・鉄路」と題したセミナーを開催、JR九州の初代社長を務めた石井幸孝氏が「人口減少下にある北海道経済のため、北海道新幹線は物流を主力とすべき」と持論を述べ、「新幹線物流についてオープンな場での議論・シミュレーション・リサーチを早く始めるべき。新幹線物流こそが北海道発展の最強の武器となる。新幹線物流について議論をするスタートの年にしてもらいたい」と強く訴えた。
北海道運輸局、北海道、北海道市長会、北海道町村会、北海道経済連合会、北海道商工会議所連合会、JR貨物北海道支社、北ト協、北海道物流を支える鉄道輸送の会、日本物流学会北海道支部が後援し、道内の多くの物流関係者が聴講した。

石井氏は、「新幹線が誕生して50年あまりが経過し、これから人口減少の時代を迎え、新幹線の旅客需要は減っていく。人口密度の高いエリアで展開しているJRの本州3社(東日本、東海、西日本)は儲かっているが、人口密度の低いエリアで展開する3島会社(北海道、四国、九州)は、構造的に鉄道事業では利益が出ない。好調な本州3社も人口減少の進展により、将来的には現在の3島会社の苦労に見舞われる。旅客ばかりにこだわったら、新幹線は将来、無用の長物になってしまいかねない。この大きな投資を今後有効活用するには、物流に使うことが必須。貨物では、1000kmの距離を超えると鉄道の強みが生きる。また、厳しい状況にあるJR北海道の経営問題と、青函共用走行問題の抜本的な解決にも資する。新幹線は物流で活用してこそ北海道に大きな効果をもたらす」と述べ、JRコンテナをそのまま積み込む「コンテナ新幹線」の有効性とその実現を訴えた。

「鉄道事業の利益は人口密度に規定される側面が大きい。北海道の人口密度は日本の平均の5分の1しかなく、鉄道事業で100円を稼ぐのに160円のコストがかかる構造となっている。また、青函トンネルを通る列車は、新幹線開通前は貨物が86%を占めており、開通後でも81%を占めている。トンネルを通過する列車は圧倒的に貨物が占め、旅客は20%もないのが現実だ。これを議論の前提として理解してもらいたい」と述べた。
青函共用走行問題について「JRコンテナを、高速走行が可能な『コンテナ新幹線』に積み替えることにより、速度制限を解消できる」として、具体的な貨物新幹線のモデルを提示。「12ftコンテナ100個が積載できる28両編成の貨物新幹線車両」や「完全自動化のコンテナ積替設備」「積替基地の候補地」などの構想図を示し、「これにより、青函トンネル経由の青森〜札幌間の所要時間が『7時間半から2時間半へと5時間短縮できる』との試算を発表した。

また、「青函共用走行問題の抜本的解決策はコンテナ新幹線の実現しかない。これは北海道のみならず、全国に新幹線中心の明るい未来をつくる突破口となる。北海道新幹線の黒字化に向けても、本格的な新幹線物流はさけて通れない。新幹線物流がJR北海道問題解決の基本となる」と強調し、時期を逸しない成功のためには、①コンテナ新幹線の車両構造、②積替装置の構造、③ソフトシステムーについて設計・試作・試験を急ぐ必要があると述べた。

「オープンな場でのシミュレーション、リサーチを行うことが必要だ。道民・国民の理解と支援のもと、国、道、JRなど関係機関による議論の場を設けることが重要。青函共用走行問題に関して、『北海道新幹線の高速化のためには、貨物輸送のレベルが下がっても仕方がない』『鉄道コンテナ輸送に影響がでないよう、旅客のあり方を考えるべき』などと相反する意見が飛び交っているが、一つの視点に固執した噛み合わない議論を続けたり、中途半端な案を採用するようなら、将来に禍根を残すことになる。鉄道は総合戦略で判断すべきで、自らの考えと異なる案こそしっかりと勉強し、あらゆる可能性を排除しないで、オープンの場で議論を急いで行うべき。この機会をビッグチャンスと捉え、北海道、日本の発展につながる答えを出すべき。貨物新幹線に関して費用負担を含めた議論を行い、北海道新幹線が札幌延伸するまでに暫定試行をするべきだ」と訴えた。

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