2つの物流人クラブ 令和に入り隆盛 「北海道物流人倶楽部参加者100人超え」「宮城物流人クラブ300回開催」 ともに災害復興にも力を与える

新元号・令和に入り、北日本の物流業界における2つの定期的な研修・交流の場が大きな成果を達成するとともに、これまでにない盛り上がりを見せ、存在感を示している。1つは「北海道物流人倶楽部」で、もう一つは「宮城物流人クラブ」だ。

北海道物流人倶楽部は、代表幹事の斉藤博之氏(北海道物流開発、札幌市西区)が宮城物流人クラブの200回目の月例会に参加したことをきっかけに、「北海道でも同じように物流業界の人が交流できる場が必要」と訴え、発足した。

「物流」をキーワードに関係する人々が自由に情報交換や親睦を深めることができる場所として、隔月で例会を開催、10人に満たない発起人による会合からのスタートだったが、設立から8年目に突入し、今年7月に開催された43回目の例会では115人の出席者を集め、初めて大台の100人を超えた。「参加者100人超え」は近年、運営側が目標として公言してきた数字であり、一つの大きな目標を達成した格好だ。
この43回目の例会は、近年の北海道では初となる「物流展示会」を企画した。北海道では、物流に関連する商材・サービスを扱う企業にとって「ユーザーに商品等を紹介するオープンな場がなかなかない」といった状況が続いており、ユーザーは「様々な企業の最新の商品等をまとめて、かつ、近くで直接見る機会がなかなかない」といった状況が続いていた。北海道の物流人にとって、物流展示会は事実上、「首都圏などで開催されるものにわざわざ出向かなければならない」状況だったが、こういった課題を解決する形で展示会を企画し、行政機関、システム企業、運送事業者、包装会社など21者が出展、出展者・参加者双方から好評を得た。同倶楽部では、今後もこういった物流展示会の企画・運営を続けていくことを検討している。
事務局を務める丸吉ロジ(北広島市)の吉谷隆昭社長は「物流に関する様々な情報が得られる場にすることができたと思う。これからも『北海道物流人倶楽部に参加できて良かった』と思ってもらえるよう、いろいろと趣向をこらしていきたい。安定的に参加者が100人を超える会になるよう頑張っていきたい」としている。

また、同倶楽部は昨年9月に発生した北海道胆振東部地震のわずか4日後に、予定していた通り例会を開催した。当日キャンセルも多く出たものの、震災・ブラックアウトを経験した北海道の物流人が集まり、被害状況や今後の対応や見通しなどを情報交換した。「自社以外の状況」をそれぞれが共有することで、その後の速やかな復旧に向けて「力になった」とする参加者も少なくなかった。この例会には、一般紙も取材に訪れ、震災・ブラックアウト直後の時期の「物流業界の被害・対応状況」を広く発信することにもつながった。この例会は、「宮城物流人クラブが東日本大震災後の早い時期に月例会を開催したことで、東北の多くの物流人の力になった」といった話を運営側が聞いていたことから、これを倣っての開催だった。

北海道物流人倶楽部発足のきっかけとなり、先達である宮城物流人クラブ(菊地稔代表幹事、JR貨物・UPRのOB)は今年5月、300回目を記念した式典と祝賀交流会を開催した。東北地方を中心とした物流関係者が集まる会合として毎月開催されており、令和になって初の開催と重なった。120人あまりの「物流人」が参加し、同クラブのこれまでの歩みを盛大に祝った。

式典で菊地代表幹事は、「平成3年2月、物流事業者、荷主企業、関連事業者らが一堂に会し、効率的な物流の実践・創造を目的として結成し、皆様の理解・協力を得て、28年にわたり開催してきた。東日本大震災のことを忘れることはできず、会員の皆様は甚大な被害を受けたにもかかわらず、ライフライン確保と速やかな復旧・復興のため、身の危険を顧みず懸命に運送事業を成し遂げた。多くの感謝の言葉が寄せられ、物流の使命の重大さを再認識し、誇りと自信につながった」と挨拶を述べた。また、震災後、「このような時だから月例会を開催しようと決めて5月に再開した。被災した会員を見舞い、励まし、被災体験や被災地の現状など情報を交換し合い、助け合って再生し、物流事業者としての使命を全うするために努めてきた。その際に作成したのが『会員相互に連携を深め、共生を目指そう』の看板。これは毎回会場に掲げ、実践を誓い合ってきた」と振り返った。
「会員1人ひとりが主役となり、仲間を誘い、本音で語り合い、学び、交換した情報などを『魅力があり、夢のもてる職場づくり』に活かすよう、励まし合い、その結果が当クラブの継続発展に結びついた。これからもこの方針を堅持し、皆様の期待に添えるよう、世話役を楽しんで努めていく」と感謝の言葉とともに、今後の抱負を述べた。

前全ト協副会長・前宮城県ト協会長の倉茂周典氏(東配、仙台市若林区)は「月例会開催300回、これはまさに偉業。この継続のエネルギーはどこにあるのか。『生年百に満たず。常に千歳の憂いを懐く〜百歳も生きられない短い生涯でありながら、千年も先の多くを憂いを抱いている』。真のリーダーの姿を示す言葉であり、この姿こそ菊地代表幹事の変わらぬ姿。若い現場勤務時代から、運送業界と、そこで働く人々の問題点を指摘し、そのテーマの改善に一心に取り組まれていた。過酷な作業と安全対策からパレットの普及を強く訴え続け、現在のパレット輸送に多大な影響を与えたのも一例で、そのほか数多くの課題に光をあて、それに適した講師を選ぶ姿は尊敬すべきもの。菊地代表幹事の強い思いと憂いが会員を引きつけ、講師の話の後、会員同士で議論する運営の仕方は素晴らしい。今後のますますの発展を心から祈念する」と祝辞を述べた。東北運輸局の吉田耕一郎局長も来賓として参加し、祝辞を寄せた。
同クラブに対し、サンワ重搬(秋田市)の高松敏雄氏は「物流に関連する色々な業種と交流が図れて、為になる。講師の話も勉強になり、これからも今まで通りの運営を続けて欲しい」と話しており、センコン物流(名取市)吉川淳也常務執行役員は「他者の営業方針や事業展開を聞けるほか、物流に関連するメーカーやシステムなどの案内もあり勉強になる。情報収集のみならず、交流会ではネットワークを広げられる」としている。また、ジェイアール貨物・東北ロジスティクス( 仙台市宮城野区)の下田正行総務担当部長は「運送業界に限らず、県内に限らず、参加者が集まり、非常に有用な場。普段接することができない人と話ができ、講演も毎回楽しみ。継続は大変だと思うが、今まで通り、ずっと続けてほしい」と述べており、東北の多くの物流人が今後も同クラブに期待を示している。

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