「サステナブルな食品輸送の実現へ」オンラインシンポジウム 農産物パレット輸送の課題など議論

政府の広報事業の「チームNEXTステップ」は11月30日、「サステナブルな食品輸送の実現へ」と題して、オンライン上でのシンポジウムを開催、パレットを活用した道産農産物の物流改善策や課題などを紹介した。
また、農産物の一貫パレチゼーションの更なる促進に向けて、①パレットの回収率を高めるため、パレットの移動情報をパレット供給会社へ提供する、②サプライチェーン上のパレットの全利用者が相互に管理契約を締結する、③小ロット輸送に向けてワンウェイパレットの採用を検討する—といった具体的な提案がなされた。

農水省の池山成俊大臣官房輸出促進審議官が「食品流通合理化の必要性と対応について」と題して講演。トラックが農産物物流の97%以上を担い、一般的に生産地と消費地が遠く、ドライバーの平均拘束時間は12時間32分、このうち荷役時間が3時間超に及ぶなど、時間・労力両面で負荷が大きいと紹介し、「ドライバーの高齢化と人手不足、労働条件関連規制などにより、すでに輸送が断られるケースも発生しており、いま変わらなければ農産物の輸送の維持が難しくなる。トラック事業者の努力だけでなく、荷主の理解と協力が不可欠」と強調。段ボールのばら積みからパレット輸送への切替えにより手荷役作業をなくし、ドライバーの負担を軽減させ、いますぐ食品流通合理化に取り組む必要があると述べた。
また、パレット輸送について、「積載率低下」「費用負担のあり方」「散逸防止の取り組み」など課題が大きいとし、「北海道は、産地主導で着荷主の全国の卸売市場と連携し、農産物物流のパレチゼーションが最も進んだエリア。これは サプライチェーン間の連携がなくては実現できない。北海道の事例を素材として、持続可能で有効な方策を共有したい」と述べた。

ホクレン農業協同組合連合会の今成貴人常務が「北海道産農畜産物の抱える物流課題と今後の対応について」と題して講演し、「道産の農畜産物は1日約1万㌧を道外に運んでおり、これは1日あたり10㌧トラック1000台分にも及ぶ。トラックドライバーの働き方改革への対応が大きな課題で、10年後にはドライバーが現状より20%程度減少すると捉え、将来に向けた物流体制を構築しなければ、運賃値上げでも解決できなくなり、道産農畜産物に関する物流は破綻するという危機感をもっている」と報告した。
平成27年からスタートした一貫パレチゼーション輸送に関する取り組みと課題を紹介し、2年後には一貫パレチゼーション輸送が10万㌧、その翌年には15万㌧、令和元年度は20万㌧を突破したとし、課題として「青果市場からのパレット回収率の向上」「産地における出荷施設のパレチゼーション対応」「積載効率減少による物流コストのアップ」「販売規格により段ボールがパレタイズできるサイズに変更できないものへの対応」「レンタルパレットの供給不足」などを挙げた。
こういった課題に対応するため、「全国9市場に対して、レンタルパレットから市場パレットへの積み替え作業を軽減させるクランプフォークリフトの導入を図り、来年度中に更に4市場で導入する」「産地の選果施設改修に対する国からの支援を要請し、令和3年度予算での実現を目指す」「JR貨物に対し、一貫パレチゼーション輸送時のパレット重量の免除、鉄道料金割引率の拡大を要請する」ことなどを行っているとし、「一貫パレチゼーション輸送に本格的に取り組みはじめて6年になるが、まだまだ大きな課題をかかえている」と報告した。

続けて、「パレット一貫管理体制の構築の推進に向けて」をテーマにパネルディスカッションを実施。ホクレン農業協同組合連合会の鎌田隆行氏、JAきたみらいの中谷幸雄販売企画部長、JAふらのの東藤学販売部長、JA士幌町の久保武美農工部部長、東京青果の中村岩生経営戦略室課長、札幌みらい中央青果の菊地一弘常務、北海商科大学の相浦宣徳教授がパネリストとして参加し、それぞれが産地と市場での農産物のパレット化推進に向けた取り組み状況と課題について説明。
JRコンテナ4基積みトレーラーの導入、クランプフォークリフトの導入、荷降し時間予約システムの導入などのほか、「貨物駅・通運会社コンテナ基地」と「青果市場」と「パレットサプライヤーデポ」をトラックで多頻度で回り、市場での滞留パレット減少・紛失リスク低減させるパレット回収スキームの構想などが示された。
このほか、パレット使用による積載効率低下対策として、軽量JRコンテナの開発や、軽量野菜輸送時のトラックの荷室容積拡大(車両の高さ規制緩和)などの要望が示された。

北海商科大学の相浦教授は、「パレット利用に伴う負担・責任が産地と物流事業者に偏重している」と指摘し、「サプライチェーンの全プレイヤーがパレットの所有・管理責任を担う」「全プレイヤーがそれぞれメリットに基づき適正に負担するよう調整する」必要があると述べた。このため「パレット回収拠点の拡大」「 パレット事業者の新規参入」「共同回収システムの構築」「パレットの共同利用」などを通じ、パレットの流通量を増やすと共に、パレットの流れを合理化させることが重要だと指摘した。

まとめとして、JA士幌町の久保部長が「パレットの移動情報の提供は、パレットの恩恵を受けているものとしての義務だが、市場からのパレット回収率は9割あまりが限界となっている。また、現在の契約は、JAとパレット供給会社のみ締結しており、物流においてパレットは重要なツールであるにも係わらず、管理意識が欠落している。パレットの回収率が高まれば、パレットの利用料が抑制でき、更なる導入促進が図れる。これによりパレットの供給量が増えれば、パレットにデータを載せるなどの付加価値が高まるほか、共同回収など効率的な運用が図れる」と指摘。
今後について「流通量の多い11型パレットに規格を統一するとともに、パレット寸法に対しオーバーハングしない段ボール等寸法の改善を基本とするべき。また、パレットの位置・移動情報に関するプラットフォームの構築が必須である」とし、①市場からパレット供給会社への「パレット移動・位置情報」を提供する、②全利用者が相互に「パレット管理契約」締結する、③少量出荷先は回収拠点にならずレンタルパレットを利用できないため「ワンウェイパレット方式」の採用と、パレット供給会社におけるワンストップ型の供給体制構築—といったことが大きな課題であり、実現が望まれるとした。

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