エア・ウォーター物流  「融雪機能付きのバックカメラ」導入 冬期の安全確保に効果実感 400~500台の車両に導入計画

エア・ウォーター物流(向出敏行社長、札幌市豊平区)は今冬、ヒーターガラスを採用した融雪機能付きのバックカメラを新たに導入した。製品は菱和(安田健社長、大阪市福島区)が開発し、昨年(2021年)11月1日から販売を開始した融雪カメラ「C4075R」と「C5075R」。
 
エア・ウォーター物流では製品の実証段階から関わり、正式に発売された後、日本初の導入事業者となった。
今後、増車や代替えのタイミングなどで「必要な車両全て」に順次取り付けを進め、グループ全体で400~500台規模の導入を計画している。エア・ウォーター物流取締役で安全推進室の三船茂幸室長は、「シンプルだが、非常に素晴らしい製品。我々の切実な思いを汲み取って開発してくれた。冬期のバック事故防止、安全確保のためにも、北海道のみならず、全国の物流事業者に広く活用されるようになってほしい」としている。

北海道では冬期間、積雪や凍結などの影響で、バックカメラを取り付けても、「モニターによる後方の確認ができない・しにくい」ことが常態化しており、対応に頭を悩ませる物流事業者が多かった。
これは積雪・寒冷地共通の課題ともいえ、こういった事態を防ぐには、「運行前にカメラに付いた氷雪を取り払う・融かす」といった作業を強いられたり、「シャッター付き」や「筐体自体を暖める機能付き」のバックカメラを導入することが一般的だった。
しかし、手間と時間をかけて運行前に氷雪を取っても、走行中に雪を巻き上げるなどして、再度見えなくなってしまうことも多いほか、「シャッターが凍って動かなくなる」「氷雪を払う際の衝撃などで故障してしまう」「筐体の放熱性に課題があり、視界が十分確保できない」というケースもあった。

「ガラスを温めて融雪・解氷」させるトラック向けのバックカメラは、こういった問題の解消のため、菱和が今回初めて開発し、市場投入。従来展開している車両用後方確認カメラシステム「CAR VISION」をベースとして、バックカメラ筐体のガラス部を温め、数分間でガラスに付着した氷雪を融かす。
同社第二事業部アフターマーケット営業部の加藤寛久氏は「使用する状況にもよるが、通常、ヒーターをONにすると数分間で融雪・解氷する。暖機運転している間にクリアに見えるようになる。ヒータ―はON・OFFができ、電力消費は大きくはなく、特別な運用の必要はない」と話す。

加藤氏は「エア・ウォーター物流様をはじめ、寒冷地の他事業者様からも、冬期間のバックカメラの問題をどうにかしてほしいという根強い要望があった。シャッター付きカメラなど、後方の視界確保に向けた『同じ効果を目指す』製品はあったが、不具合があってもそのまま使用するという事例も聞いていた。実際、故障したシャッターをガムテープで固定して使っているトラックを見たこともあった。ニッチな市場だが、確かなニーズがあり、既存技術を組み合わせることで製品化が可能と判断し、開発に踏み切った」と説明する。


菱和では一昨年(2020年)10月頃から開発をスタートし、ガラス温度の上昇幅の設定や、接着剤の塗布方法、組み立て方法など工夫を重ねて、製品化を進めた。
翌年1月から3月の間、エア・ウォーター物流がフィールドテストに協力。豪雪・極寒という一番厳しい環境の北見と旭川の拠点のトラックに同カメラを装着し、性能や効果などを検証した。この結果、シーズンを通して「短時間でガラスに付着した氷雪が解け、後方の視界を常にクリアに見ることができる」という期待通りの効果のほか、「走行中に発生する結露にも効果的」だと確認、耐久性も問題はなかった。
テスト終了の際、ドライバーから「外すのですか」と残念がる声があがったため、エア・ウォーター物流ではテストに用いたカメラは取り外さずにそのまま使用し、11月の正式な市場投入を待って、石狩の拠点のトラックにも導入した。
今後も多くの拠点で順次導入を進め、長期間にわたって設備投資を行っていく計画だ。

三船室長は「ドライバーが『外して欲しくない』と感じる優れた製品。冬期でも後方の視界が見える化された画期的なカメラだと感じている。冬期の視認性悪化は長年の課題で、『見えないもの』という感覚があったくらい。とりわけ発着荷主構内でのバック事故は、品質・信頼に直結する。こういった課題を払拭してもらえた」と高く評価をしている。また、「積雪寒冷地の市場はそれほど大きくない中、現場の切実な声を拾い上げて開発してもらい、非常にありがたい。外観はとてもシンプルだが開発の努力が見え、ドライバーを守るものになっている。個人的にはトラックの標準装備となってほしいくらい」と述べる。

安全推進室の中山宏次購買業務部長も、「これまで様々なメーカーに、『寒冷地向けの車両関連製品が十分ではない』といった話をすると、『市場が小さいため、開発が難しい』といった反応が専らだった。今回、悩みを持つ現場の思いを汲み取って製品化をしてもらい、感謝している。ドライバーの不安軽減につながる素晴らしい製品で、雪や氷だけではなく、結露対策としても有効だった。運行中、トンネルに入るとバックカメラが結露することがあるが、その際も短時間で後方の視界がクリアになった。湿気の多い地域でも有効なため、寒冷地向けとしてだけではなく、全国的にニーズはあるのではないか。また、バックカメラだけではなく、冷凍車の庫内を確認するための用途や、サイドカメラなど様々な分野への応用も可能になるのではないか」としている。

安全推進室の中山工安全保安部長は、「当社では高卒ドライバーの採用を進めているが、その際、親御様の一番の心配は事故について。今回のバックカメラをはじめ、安全確保に向けた製品の積極的な導入が安心材料につながる。このような安全補助機能を持つ製品の導入と、安全に対するマインドの醸成の両輪でしっかりと対策していると自信を持って説明できる。人材の採用に向けても効果的なツールだ」としている。

同社では今後、増車や代替えなど新車導入の際、箱車やローリー車を中心に必要なエリア・車種に順次同製品を取り付けていく方針。また、使用過程車であっても、現場から要望がある場合は導入を検討する予定で、対象となる車両を400~500台規模と見込んでいる。三船室長は「長期にわたる設備投資となるが、1件事故が起きると多額のコストがかかる。事故を起こさせないための安全に関する装備は積極的に導入したい。また、当社や寒冷地の事業者だけではなく、業界全体に広く活用してもらいたい」としている。

同製品はオープン価格だが、中型・大型車向け「C4075R」は4万8800円、小型・中型車向け「C5075R」は4万1800円(ともにカメラ本体のみ。税別・工事費別)を参考価格としている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする