北海道の「2024年問題」は、積載効率1割アップでクリアできる?

2024年度がスタートするまで2カ月となった。
物流の2024年問題に関する話題が北海道でも様々な媒体によって取り上げられる機会が増えている。その際、このまま対策を講じなければ、「何年後には何%の荷物が運べなくなる」「何万人のトラックドライバーが不足する」といった各種推計による定量的なデータを交えて、「物流危機」の文脈で取り上げられることが目立つ。

例えば、NX総研が試算し、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」などで示された「北海道で不足する輸送能力の割合が11.4%」といったデータや、野村総研が「トラックドライバー不足の地域別将来推計と地域でまとめる輸配送」のレポートで示した「北海道では2025年には30%、2030年には39%の荷物が運べなくなる」といったデータは多く流通している。

より近年では、昨年7月末に第一回北海道地域フィジカルインターネット懇談会で示された野村総研による「北海道の物流実態調査」におけるデータが取り上げられるケースが多く、これは「北海道全体では2025年に13%、2030年に27%の貨物を運べなくなる可能性がある」といったもの。北海道の「地域別の需給データ」を示した初のケースでもあり、とりわけ「旭川・函館・釧路・北見で深刻な状況」と、これまで以上に詳細な見通しを示している。

こういった具体的な数字が示されることにより、北海道でも物流危機を招かないため、「運賃をアップし、ドライバーの給与を引き上げよう」「ドライバーの労働時間の短縮や、労働環境の改善を進めよう」「多重下請け構造を見直そう」「ある程度のサービス水準低下やコストアップは仕方がない」といった機運の醸成が進んでいることは間違いないが、一方であまりに「物流危機」が強調されすぎているきらいがあるように感じる。より重要なのは、「深刻な影響が出ないよう、それぞれの立場で具体的に何をするか」といった考えと行動であるはずだが、そういった議論は未だにあまり多くはない。

「北海道の物流実態調査」では、「2025年に13%、2030年に27%運べなくなる」というデータの後に、関連する推計を示している。それは「現状40%未満となっているトラックの積載効率(能力トンキロを、輸送トンキロで除した値)を、共同輸配送によって50%まで向上させると、北海道のドライバー不足は概ね解消する」というもの。積載効率を現状より共配などによって1割あまり高めると、北海道全体では「2025年にはドライバーの供給は需要よりも2%多く、2030年でも1%しか不足しない」という試算だ。

従って、この調査は、よく引き合いに出される「何%運べなくなる」という点よりも、「トラックの積載効率を1割あまり高めることができれば、物流危機は起こらない」と読むべきであり、今後より重要なのは「トラックの積載効率を高めるためには、何をすべきなのか。これを阻んでいる要因はどこにあり、それを解消するには誰が何をすればいいか」という議論と、それを踏まえた実践であるはずだ。

積載効率を恒常的に引き上げることは簡単ではなく、荷主や物流企業者ら当事者としては「やれるなら既にやっている」と捉える向きが多いだろうが、2024年問題への対応としてフォーカスすべき重要な点 の一つは積載効率であるのは間違いない。同調査では、「共同輸配送を進めるには、各社の輸配送の実態の可視化、荷主の関与、データの活用がカギ。荷主企業、物流企業などの関係者の協力が必要」とまとめの部分で記載しており、ざっくりとした方向性を示している。
物流の2024年問題について触れる際、「うちはこんなに大変だ」「完璧な対応は無理だ」という声も未だに聞かれる。しかし、後ろ向きの議論を行う時期はもう過ぎたのではないか。それよりも「積載率や実車率を高めて、物流に支障を出さないようにするには、誰とどのような取り組みを具体的に進めるのか」ということが問われる時期となっている。

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