日本物流学会北海道支部の長岡正支部長(札幌学院大学)は、9月に発生した北海道胆振東部地震とその後の道内全域にわたるブラックアウトにより、地域のサプライチェーンが大きく混乱したことを受けて、「在庫管理のあり方が見直された」と捉えている。
同支部長は、「かつて北海道には台風が来ないとか、地震が少ないと言われてきたが、最近になって状況が変わったようだ。大量の倒木が見られるのは、北海道の木はもともと脆弱というより、想定外の強風のためだろう。今回の地震では、店頭の在庫が不足するなか、大規模停電により倉庫からの搬出ができなかったり、食料品などは短時間で無価値になった上に処分費までかかるなど、深刻な状況も見られた」とし、「今回は例外的という見方もあるが、緊急事態を想定した在庫管理の必要性が再認識された」と強調する。
「かつてジャストインタイム方式が提唱された際には、在庫は必要悪であり、キャッシュフローの点からも無在庫経営が理想とされた」ものの、自然災害が多発する状況を迎えたため、「不意な事態に備えての緊急在庫や安全在庫に関心が高まり、良し悪しはともかく、在庫保有は企業経営上の通念であり、最適保有量の決定が課題となっている」とする。
企業の在庫管理について、「サプライチェーンの一部を構成するため、個別企業の努力では限界があり、今後、企業の枠を超えた対策が講じられることだろう。サプライチェーン上の在庫管理を企業間で実施する際には、情報共有が必要となり、企業間を結びつける物流事業者の役割が改めて注目されている」としている。