北海道は4月3日、「公共施設を利用したラストワンマイル輸送の効率化に向けた実証実験」の結果を公表した。
「公共施設」を利用したラストワンマイル輸送の効率化について昨年10月26日~11月25日の1カ月間、北海道、北海道運輸局、ヤマト運輸が連携して実施したもの。東川町内の公共施設を利用した「地域輸送拠点」形成に関する実証実験を行った。
北海道では過疎化や高齢化が進行している地域で、宅配便の輸送効率の低下やトラックドライバーの労働力不足を背景に、宅配サービスの維持が困難となることが懸念されている。このため、行政と運送事業者が連携して「地域社会と物流事業者の双方に利益をもたらす輸送の効率化に係る物流モデル」を構築し、物流課題の解決を目指す「地域輸送拠点」形成を目指す実証実験を行った。実証実験は、上川総合振興局管内東川町が保有する公共施設「東川町交通安全防犯指導会館」を利用した。
ヤマト運輸は、東川町外の東神楽営業所(東神楽町)から東川町内まで宅配便を配達しており、ドライバーは2巡目以降に配達する荷物を受け取るため、配送地域と営業所を往復走行していた。そこで、営業所と配達地域の中間付近にある公共施設を、宅配便の荷物を一時保管し非対面でドライバーへ引渡しできる「地域輸送拠点」として利用した時のドライバーの労働時間短縮や CO2 削減などの効果や普及に向けた課題を検証した。
実証の結果、「地域輸送拠点」を利用することで、「労働環境の改善」「環境への負荷低減」といった2つの効果を検証でき、地方部における物流課題解決への貢献を確認した。
「ラストワンマイル輸送」に限ると、トラックドライバーの労働時間が月間15時間(約7%)削減できた。環境負荷ではCO2の排出量が月間約37%削減できた。
限られた人員で効率的な輸送の実現が可能であるとした一方、「通年利用を見据えた場合、積雪期の除雪などの運用体制」「複数事業者が共同利用する場合の施設利用や荷物管理などに関するルールづくり」「幹線輸送、ラストワンマイル輸送の走行経路を考慮した上で、効果の高い引継場所の選定(実証実験では、幹線輸送の走行距離が増加)」といった課題を確認した。
また、「ラストワンマイルと幹線輸送」の総評価として、幹線輸送はこれまでより走行距離が1日あたり9㎞、走行時間は1日あたり10分・月間で5時間増加した。ラストワンマイル輸送で月間15時間労働時間が削減できたので、あわせてトラックドライバーの労働時間は月間10時間(約4%)削減できた。また、環境負荷ではCO2の排出量が月間約5%削減できた。
一方、「幹線輸送の走行増加」が課題となった。
本実験を通じて明らかになった効果等を全道に展開することで、道内で同様の課題を抱える各地域において、物流課題の解決に向け効果が期待できることから、引き続き、行政・物流事業者 が連携して、実用化に向けた検討を継続するとしている。