コロナショック・北海道の物流業界の動き① 〜業界内で相次ぐ自粛・先行き不安

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、北海道では鈴木直道知事が2月28日、「緊急事態宣言」を全国で初めて発表、週末の外出を控えるよう異例の要請を行った。
緊急事態宣言は同日から3月19日までとし、道では集中的な感染拡大対策を行う考えで、「換気が悪く、人が大勢集まる場所には行かない」よう強く要請している。
感染拡大に伴い、道内ではあらゆる業種にまたがり、イベントや会合等の中止・延期が相次ぎ、大型商業施設では週末の営業をとりやめたところもあった。
「通常業務以外で人が集まる」ことを全面的に自粛する動きが広がるとともに、感染収束の見通しが全くわからない中、道内の物流業界でも、年度末を迎え経済活動が一定期間縮むことが見込まれるため、不安の声があがり始めている。
2020年の2月下旬から本格化した「コロナショック」、道内物流業界の動きを追う。

今回の「コロナショック」ですぐに目立った動きとなったのは、「業界内での事業・会合・イベント」等の中止・延期だ。道内物流業界では2月下旬から3月中旬にかけて予定されていた多くの行事や会合が軒並み中止や延期となった。

3月1日に道内各地で予定されていた運行管理者試験は、実施2日前の2月28日の夕方、中止の情報が急遽流れ、受験者を抱える多くの運送会社が混乱した。「あまりにも直前すぎる。知らずに試験会場に行く者もいるはずだ」(札幌市の事業者)と怒りの声もあがった。
適正化事業実施機関は同15日まで巡回指導を原則中止(延期)とし、以降も状況により延期することがあるとした。
北ト協は同3〜5日にかけて3カ所で予定していた「取引環境と長時間労働の改善並びにホワイト物流推進に係る説明会」を延期し、同11日の「重量・鉄鋼部会、海上コンテナ部会、タンクローリー部会合同研修会」を中止した。
札ト協では初任運転者特別指導研修会(同14日)を中止、北海道運輸局では同9日までの間、整備管理者選任前・選任後研修を中止、このほか、物流関係者が隔月で集う北海道物流人倶楽部は例会(同9日)を中止、運送事業者による勉強会の運送事業経営塾は、初の試みとして準備していた管理者勉強会(同14日)を中止するなど、運輸関係の多くの行事が取りやめになっている。
また、北海道経済産業局では、トッキュウ(岩見沢市)が登壇予定だった省エネシンポジウム(2月27日)や包装関連のパッケージデザインコンテスト展示会(同29日)、ドローンがもたらす空の産業革命セミナー(3月6日)をそれぞれ中止した。
このほか、企業単位でも「全体会議を中止した」(旭川市の事業者)、「経営発表会を中止した」(札幌市の事業者)などの声があちこちから聞こえて来る。

道内ほとんどの物流事業者は当面、通常通り営業を行うものの、「トラックの運転や倉庫作業など、テレワークという訳にはいかない」(石狩市の事業者)という仕事の特性上、「万が一、従業員が感染した場合」への不安が高まっており、「その場合は、社会的な責任として公表し、2週間程度の営業自粛を余儀なくされる。そうすると影響は甚大で、事業が継続できるかといったことにもなりうるのではないか」(夕張郡の事業者)といった声があがっている。一方で「もしドライバーが感染した場合、全員が一カ所に長時間いるわけではなく、必ずしも社内での感染が広がるわけではない」(札幌市の事業者)として営業を続ける意向を示す事業者もいる。不安が高まる中、「〜市のドライバーが感染したらしい」といった真偽不明の噂も出回っている。

このほか、2月下旬から2週間あまり道内の小中高校が一斉休校となり、とりわけ「小さな子どもがいる従業員」がこの間、通常どおり出勤・勤務できるのか、各家庭・企業の間で調整の動きが慌ただしくとられている。「この時期、暖房が必要なので、子どもを一人にさせられない」(札幌市の事業所に勤務する事務員)との声もある。

長期間、中止・自粛の状況が続くと、経済活動が停滞し、「モノの流れも減る」ことが確実で、「仕方がないことだが、物流企業にとっていいことは一つもない。早く感染が一定程度抑えられる状況となるよう祈るしかない」(札幌市の事業者)と嘆きの声もあがっている。

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