丸吉ロジ ビジョン経営で成長 2022年度〜2030年度新経営ビジョン策定へ 

丸吉ロジ(吉谷隆昭社長、北広島市)では、自社の強みや将来の事業環境を深掘りし、自社の進む方向を明確化させる戦略的な経営を進めており、この約10年間は、中長期的ビジョンの「経営羅針盤」をトップダウンで策定、これに沿った事業を展開し、大きな変化・成長を果たしてきた。

直近の5カ年計画の羅針盤は2020年度終了の予定だったが、コロナ禍の直撃により、「先の経営環境があまりに見通しにくかった」ことと「盛り込んだ項目に積み残しがあった」ことから、1年延長して2021年度までとした。

羅針盤が今年度で最終年を迎えることから、同社では「経営ビジョン」を刷新、2022年度から2030年度までのビジョンを固める方針だ。今回はトップダウンの度合いを薄め、来年度以降の目指す将来像を作り上げるため、11月から社内で幹部社員を中心とした本格的な議論を進めている。

今年度、吉谷社長が次の経営ビジョンについて考えを深めていたタイミングで、都市銀行より「SDGsを推進するための私募債発行」の提案があった。この手続きのため、同社が取り組んできたことや大事にしている価値観を分解し、掘り下げ、整理してみると、「SDGsの枠組みが、社内の取り組みを社外へ発信する際に、ちょうどいい言語になっていた」ことに気づいた。

「多様な人材が活躍できる安心・安全な職場」「地球環境に優しい効率的な物流網」「DX推進による次世代型物流」「取引関係者とのパートナーシップ」「地域社会への貢献」など、それぞれこれまで取り組んできたことが、「SDGsの枠組みで言語化でき、カチッと枠組みにはまった感覚があった」という。
「本質的な部分でSDGsの価値観に深く共鳴できた。これを極めれば、これまでの取り組みや価値観をさらに磨くことにもつながり、すごい強みになる」と考えことから、次期ビジョンはSDGsを大きな枠組みとして活用することとした。

「これまでの指針となった経営羅針盤は10年以上前に、頭にすごく汗をかき、 泣きそうになりながら策定した非常に思い入れがあるもの。将来の環境を予測し、ありたい姿とそこに至る具体的な取り組みを網羅した。作ってから『どう思われるか』が気になり、しばらくは発表できず、机にしまっていたものだったが、これを社内外に発表したことで、やることが明確になり、関連する情報に対するアンテナの感度も高まり、大きな経営判断も思い切って実行できた。羅針盤に書かなければ出来ないことが多かったし、羅針盤に盛り込んだ多くの項目のほとんどを達成できた」とし、「この存在は本当に大きかった」と強調する。

羅針盤を作成した当時、同社は「北海道で重量物・長尺物をトラックで運び、重機で一部工事をしていた地場の運送会社」だったが、現在は「東日本(北海道・東北・関東)で鉄に関する先進的なロジスティクスサービスを提供する物流企業」へと大きく変化した。

事業エリアが「北海道」から「東日本」へ拡大し、事業内容も「トラック運送と工事」から「トラック輸送、シャーシ輸送、コンテナ輸送、物流センター運営、物流コンサルティング、全体のオペレーションの組み立てなどを連携させた総合的なサービス」へと進化、人員や売上高の規模も2倍近くになった。

この間、浦安鉄鋼団地にある「日本でナンバー1の規模」をほこる鉄鋼物流センターの運営を担うようになった。
ここで培った「荷主とパートナーシップを組み、輸送・作業・管理・配車業務などを包括して受託するシステム」が同社の大きな強みとなっている。
これにより、「作業員がトレーラー運転も行う」「センターの管理業務と配車業務を1人の人間が行う」といった多能工化が進められた。また、運転と作業を分離し、ドライバーに積み下ろし・荷締め・シート養生などの作業をさせず、拘束時間を短縮するといったオペレーションを可能とした。従業員に運転をはじめ、入出庫管理や荷役作業、玉掛け、クレーン、溶接・加工、事務作業など鉄の物流に関する基本的なノウハウを教えるカリキュラムを作成し、人材確保・育成の体制も整えることができた。

また、鉄の輸送ではあまり一般的ではなかったJRコンテナへのモーダルシフトを進め、通常の「20ft箱型コンテナ」に加え、「21ftの無蓋コンテナ」の運用を開始。また、シャーシの無人航送へのモーダルシフトでは、「28t改良スタンション型フェリーシャーシ」「27t改良アオリ型(アコーディオン式ホロシート)フェリーシャーシ」など新しい形の車両を積極的に導入、「鉄の輸送は4㌧車、10㌧車が中心」と考える向きが多い中、効率的な物流のためのコンテナ・シャーシの開発・運用に注力した。とりわけ、アコーディオン式ホロシートシャーシは、「通常の平シャーシにシート掛けをする作業がベテランドライバーで60分以上は普通にかかるところを、新人ドライバーや女性ドライバーであっても10分程度で簡単にシート掛けが完了する」という作業効率に優れたもので、同社の大きな武器になっている。

これらを振り返り、「浦安での大規模センター業務の受注は、羅針盤に3PL案件の受託と明記しなければ、『十分な態勢が整ってから』などと慎重になり、受けていなかったかもしれない。モーダルシフトも同様で、これほど展開していなかったかもしれない」と述べる。また「東北地区への進出、物流総合効率化法の認定、ブログの10年間毎日更新、ISO39001の取得・浸透、本社社屋の一新、全拠点・全従業員を集めた40周年イベントの開催といった多くのことも、羅針盤に書いたことで、自信を持って実現できた。このため来年度からの新たなビジョンでは、2030年度までのあるべき姿を明確にし、これに沿った経営を行っていきたい。『羅針盤』の文言が入るかどうかはわからないが、大きな変化・成長につなげられるビジョンを策定し、内外に発信していきたい」としている。

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