岩見沢農業高校、北海道大学、北海道立総合研究機構(道総研)は8月29日、プラチナ触媒を利用した「切り花流通の鮮度保持に係る共同研究プロジェクト」を行うと発表した。
岩見沢農業高等学校の生活科学科の生徒たちは2021 年度、フードロス削減コンソーシアムが主催する「フードロス削減アイデアコンテスト」に参加し、北海道知事賞を受賞。
同コンソーシアムでは、青果物の鮮度保持を対象に「プラチナ触媒」の実証試験を行っているが、プラチナ触媒を野菜ではなく花きに利用するというアイデアが評価された。
花きの流通体制の課題は鮮度保持にあり、温度管理であるコールドチェーンについては取り組みが進ん でいるが、植物ホルモンの管理などはあまり進んでいないため、同校ではエチレンガスを除去できるプラチナ触媒に注目し、花きのロス削減アイデアを考えた。
保冷庫(約7~10℃)の段ボール内にプラチナ触媒と同校で栽培しているアルストロメリアとトルコギキョウを置き、10 日間の鮮度保持効果を比較したところ、触媒の有り無しの効果が目視で違いが分かるほどの鮮度保持効果が見受けられ、北海道知事賞を受賞した。
同コンテストで発表した試験結果から、プラチナ触媒の使用が花きに対する鮮度保持効果を期待できることが示唆され、これらの結果を受けて、今年度は岩見沢農業高校・北海道大学・道総研の「高・大・研究機関連携」を作り、実用化に向けた研究を行う。
今年度の研究対象は、アルストロメリア・ガーベラ・トルコギキョウで、岩見沢農業高校が実際の花の栽培・管理、実験データ採取と分析、商品化への企画立案を行う。
北海道大学はプラチナ触媒提供と使用方法の指導、道総研は試験や商品化に対する指導・助言をそれぞれ担当する。
北海道大学では、触媒科学研究所の福岡淳教授が、低温環境下(0℃)においてもエチレンを完全分解することができるシリカ担持プラチナ触媒を2013年に開発し、改良を続けている。
エチレンは果物や野菜そのものから発生し、熟成や腐敗に影響するが、低温環境下でエチレンを除去できるこの触媒は今までに家庭用冷蔵庫に搭載されるなど、家庭における野菜の鮮度保持に活用されている。
2020年に北海道大学、北海道科学技術総合振興センター、道総研、セコマグループ が、食品の生産、流通、小売等のサプライチェーンにおけるフードロス問題の解決と歩留まり向上を目指し、フードロス削減コンソーシアムを設立した。 同コンソーシアムの活動の一つとして「フードロス削減アイデアコンテスト」を開催し、高校生や高専生を対象に、プラチナ触媒を使った生産物のロス削減アイデアを募集していた。