北海道食品産業協議会とフードサプライチェーン官民連携プラットフォームは11月29日、ANAクラウンプラザホテル札幌で「食品産業物流セミナーin札幌」をオンライン併用で開催した。
北海道食品産業協議会の福山恵太郎副会長は「食品産業にとって物流の2024年問題は大きな課題。北海道では2030年に27%もの荷物が運べなくなる可能性を指摘する調査もある。北海道の良質で安心安全な食品を全国に安定的に供給することは私たちの使命。食品産業全体の問題としての考えるべき」と述べ、北海道農政事務所の吉永宏喜次長は「北海道の農産物を中心とする物流は収穫期に集中し、帰り荷が少ないことに加え、今後は鉄道貨物が維持されるかの懸念もある。2024年問題への対応は、メーカー、卸、小売など多くの関係者が連携していくことが必要」と訴えた。
農水省大臣官房新事業・食品産業部食品流通課の森山清課長補佐が「物流の2024年問題の食品産業への影響と対策」をテーマに講演し、政府の政策パッケージなどを解説。今秋に国交省が全トラック事業者を対象に荷主・元請の違反行為等の調査を行い、これとトラックGメンが集めた情報を照らし合わせ、悪質なケースには「働きかけ」「要請」「勧告・公表」などの法的措置が発動されると説明。また、食品産業センターの大角亨専務が食品産業をめぐる最近の情勢について解説した。
流通経済研究所の堀尾仁特任研究員が「製配販の共通の目標設定に向けた取組み」をテーマに講演し、「物流革新に向けた政策パッケージ」「物流革新緊急パッケージ」などが立て続けに発出され、「ここまでくれば、やることは明確」と断言。
個社単位では「モーダルシフト、積載率向上、物流費タリフの抜本的見直し、激甚災害対応オペレーションの見直し、外装表示とサイズの標準化、賞味期限の年月表示化」を行うべきであり、同業他社との連携では「共同物流の推進、商慣行改革に向けた目線合わせ、作業や書式等の共通化によるオペレーションの効率化」といった改革が必要と述べた。また、サプライチェーン全体では「納品リードタイムの延長、長時間待機・附帯作業の撲滅、納品伝票のペーパーレス、検品レス、納品期限の緩和」の改革が必要で、行政や業界団体を巻き込んで「納品伝票の電子化、外装のサイズや表示・コード体系の標準化」などを進めるべきだと話した。
「個社だけでは対応できないことが多く、課題解決に向けた連携が重要。個社最適の追及は、サプライチェーン全体の効率化につながらないケースが多い。個社の行動計画策定前に、サプライチェーン全体の最適化を意識した行動指針的なものを、製配販の三層を含む関係者間で共通認識として持っておく必要がある」としたほか、「業界ごとに、水平連携、垂直連携の協議体を設ける必要性がある」と主張。
また、連携の求心力は「運べなくなる危機を、その業界のサプライチェーンを担っている全関係者でどうう回避するか」にあり、「コスト削減」「商取引」ではないと強調。「2024年問題は通過点に過ぎず、安定した物流確保のためには構造的課題に切り込むことが必須。全ての活動の理念は『持続可能な物流構築を目指す』ということを忘れないでほしい」と呼びかけた。