北海道の物流現場への潜入、その雑感⑵

[受け入れ体制には大きな違いがある]

従業員の受け入れ体制は、各現場によって大きな違いがあった。

細かいところでは、「働きたいなら自分で安全靴を用意するように」という現場と、未経験者でも抵抗なく応募してもらえるよう「こちらで安全靴を用意します」というところがあった。
従業員が充足している場合は問題ないかもしれないが、新たに募集・採用をする場合、応募を検討する者にとっては、この違いは心理的に意外に大きい。現場作業を経験したことがない者が安全靴を持っているケースは少なく、また、どれだけ続けられるか分からない仕事の応募にあたって、「わざわざ安全靴を購入する」というケースも多くはない。
従って、人材を募集する際、前者のような現場では、未経験者でも十分に働ける職場であったとしても、「入り口の段階で採用の可能性のある人をかなり絞ってしまっている」ことになる。こういった募集を見た場合、応募を検討する人は、この段階で「ここは安全靴を持っているような人しか採用しようと思っていない」と捉え、「未経験だからやめておこう」となってしまっていることが多くあると思われる。もちろん「現場未経験者は採用したくない」として意図的に「安全靴ブロック」をしているケースもあるかもしれないが、体験的に「未経験者ではとてもできない」という現場はほとんどなかったように思える。
また、一方で「靴のサイズもわからない、いつまで勤務するかわからない人材に向けて、わざわざサイズの異なる複数の安全靴を揃えることに抵抗を覚える」という企業側の立場も理解はできるが、人材の確保を最優先に考えている場合は、このような点への配慮が意外と重要ではないかと感じた。

同様に、同じような仕事内容であっても、現場で「ヘルメットや安全帽を用意」するケースもあれば、「自分で帽子を持参させる」ところ、また、「頭に何も被らない」ところもあった。働く人間にとっては、「何を被るか」によってその現場の評価が変わることはほとんどないが、少し俯瞰して見ると、「現場を管理する側の安全や衛生への意識」が表れているように思えた。
ある現場では、「上から何か落下する」「ラックやカートなどに頭をぶつける」といった可能性が低そうなところだったが、それでも「安全帽」を用意し、作業員に貸与していた。そこの管理者は「何があるか分からないので、これを被ってください。万が一転んで頭を打った場合、被害状況が変わるので」と話しており、そういった事故発生の可能性は決して高くはないかもしれないが、この説明を聞いた際、「大人数が長期間にわたって仕事をしていくと、細かいことであったとしても、この安全帽によって重大事故の可能性は幾分かでも下がるのだろう」ということ、また、「この職場の管理者は、安全に対する意識が高く、おそらく、そのほかの面でもこういった安全面を重視したルールがあるのだろう」ということが分かった。

また、「うちは食品を扱うので(衛生面を配慮して)、帽子を被ってください」という現場があった一方、同じく食品を扱うところでも、このようなことを全く気にしていない現場も少なくなかった。

このほか、「初回のみ」の非常に些細なことだが、そもそもその現場で働くのに「建物のどの入り口から入ればいいのか」「現場のどこに集合すればいいのか」「車で通勤した場合、どこに停めればいいのか」といったことが事前に明示されていないケースが意外に多く、戸惑うことがあった。反面で「写真の活用や構内を図示することで、事前に入り口や集合場所、駐車場などをわかりやすく示す」ところもあった。これは「2回目以降の勤務からはわかる」ものの、「初めて働く人を不安にさせない、混乱させない」ための配慮からくる取り組みであり、こういった現場は、そのほかの面でも「従業員を安心させる」ための配慮を感じることが多かった。

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