出光興産(木藤俊一社長、東京都千代田区)、ENEOS(宮田知秀代表取締役副社長、同)、北海道電力(齋藤晋社長、札幌市中央区)の3社は2月20日、苫小牧西部エリアにおける国産グリーン水素サプライチェーン構築事業の実現に向けた検討を行うことに合意し、覚書を締結したと発表。
同検討は、2030年頃までに北海道苫小牧西部エリアにおいて、国内最大となる年間約1万㌧以上のグリーン水素を製造できる水電解プラントを建設し、再生可能エネルギーを活用して製造したグリーン水素を、出光興産および地域の工場などにパイプラインで供給するサプライチェーンの構築を目指すもの。
北海道は、洋上風力など再エネのポテンシャルが高い一方、電力需要が比較的小規模かつ本州との電力融通量に制限があることから、再エネの導入・拡大にあたり、余剰電力の有効活用や再エネ電源の出力変動に対応するための調整力確保が課題だった。これに対し、水電解プラントを調整力として活用することで、北海道における将来的な余剰電力の有効活用や電力市場への調整力供出を行い、さらなる再エネの導入・拡大を図っていく。
また、北海道苫小牧西部エリアに立地する事業者への調査により、当該エリアにおける化石燃料から水素への転換需要は、各工場のプロセス利用、発電利用、熱利用およびモビリティ利用として年間合計7万㌧程度が見込まれており、国産グリーン水素サプライチェーンの構築が当該エリアの脱炭素化に大きく貢献できるものとしている。
出光興産は「国産グリーン水素の製造とサプライチェーン構築により、今後も近隣事業者へのエネルギー供給責任を果たしていく。また、北海道製油所エリアで製造されるグリーン水素による、国内初となる地産地消型の合成燃料の製造を目指す」としている。
ENEOSは「脱炭素社会・循環型社会の実現に向けた本格的な水素の大量消費社会を見据えて、国内外でCO2フリー水素サプライチェーン構築に取り組んでいく。さらに、持続可能な航空機燃料(SAF)や合成燃料など次世代エネルギーへのトランジションを着々と進めていく」とし、北海道電力は、北海道内の豊富な再エネ電気から水素を製造し、その水素を様々な分野で利用する『水素サプライチェーン』を国や道、自治体、他企業などとも連携し構築することを目指す」とコメント。
鈴木直道北海道知事は「この検討は、2030年までに北海道内で国内最大となる水素の生産・供給拠点構築を目指し、道内外のエネルギー企業が垣根を越えて連携する画期的な取組であり、本道が推し進める水素等の利活用や『ゼロカーボン北海道』の実現にもつながる重要な一歩。さらに、既に進められている『先進的CCS事業』の取り組みとともに、苫小牧エリアにおけるCCUSやカーボンリサイクルの拠点化の実現に向けて大きく前進させるもので、水素・合成燃料等を通じて、積雪寒冷地である本道の幅広い産業の脱炭素化にも寄与することが期待される。今後とも、国の政策動向も注視しつつ、本道が、国が進める『水素・アンモニア拠点』に選定されるよう、苫小牧市をはじめ地域や関連の企業等と連携しながら取り組んでいく」とコメントした。
岩倉博文苫小牧市長は「当市は、多様な産業が集積し、豊富な再生可能エネルギーのポテンシャルを有する、北海道有数のものづくり産業の拠点。本検討はエネルギー転換による脱炭素を進める観点からも非常に重要な取り組みであり、当市において検討が進められている水素等の次世代エネルギー拠点の形成に寄与するものと期待する。この検討内容が実現することは、当市における『ゼロカーボンシティ』の実現に向けても、大変重要なことであると認識しており、ゼロカーボン産業都市の実現に向けて取り組んでいく」とした。