北海道地域PI懇談会 全国初開催 「積載率50%で物流危機回避」

北海道地域フィジカルインターネット(PI)懇談会の初めての会合が7月28日、札幌コンベンションセンターで開催された。
経産省が主催した全国初の会議体で、会場には道内の有力物流企業30社、メーカー・卸・小売など大手荷主企業40社をはじめ、物流関連企業や行政機関、経済団体など約240人が参加。このほかオンラインで全国から100 人が参加した。

PIとは、インターネットの考え方を物流に適用した共同輸配送システムの構想。これを社会実装する動きの先駆けとして、北海道で懇談会を設置、北海道としてもPIに関する初の本格的な会合となった。
製配販の荷主企業をはじめ、物流企業の協力・連携の促進に資するよう、行政も含めた幅広い関係者間でPIに関する情報・意見交換を行う場として開催し、年度内に「物流情報の電子化・データ連携」と「小売業の在庫管理・需要予測」に関する実証を行い、年明けにもう一回懇談会を開催する。

北海道経済産業局の岩永正嗣局長は「物流は社会インフラだが、モノを製造しても、運べない状況に直面している。地域や業種の枠組みを超え、北海道を『PIのリーディングモデル』にしていこう」と呼びかけた。

経産省商務・サービスグループの中野剛志消費・流通政策課長兼物流企画室長は「2010年代半ばから物流のリソースが不足する局面に突入し、持続可能な物流に向けた対策は政府全体としてトッププライオリティに位置付けている。PIとは『共同輸配送』『容器の標準化』『車両や倉庫などリソースのシェアリング』を『デジタル化』して徹底すること。政府でロードマップを策定し2040年にPIを実現しようとしており、その最初の場として、広域分散型の社会構造で、物流にとって過酷な地域の北海道を選定した。北海道は物流への問題意識が強い企業が多く、PIへの親和性が高い。物流危機を乗り越えるリーディングモデルを生み出せる可能性がある地であり、企業や業種の壁を越えた協調の取り組みに期待している。北海道でPIのモデルを創り、それを全国で真似をしてもらう」と話した。

野村総研アーバンイノベーションコンサルティング部モビリティ・ロジスティクスグループの小林一幸グループマネージャーは北海道物流実態の調査結果を報告し、「対策を行わないと、2030年に北海道全体ではトラックドライバーの需要が27%不足し、特に旭川・函館・釧路・北見は30%以上不足する深刻な状況にある。道内の営業用トラックの積載率は現状約35%であり、業界横断での共同配送を進めることで、積載率を2030年度に50%まで向上させれば、北海道全体でドライバー不足は大きく改善するという試算を得た。積載率50%の実現により、想定される物流危機にそれなりに対応できるはず。このためには、各社の輸配送の実態の可視化、荷主の関与、データの活用がカギであり、荷主企業を含めた関係者間の協力が必要」と強調した。

北海商科大学の相浦宣徳教授は北海道物流の特殊な事情について解説し、「今回の懇談会は、他地域に対する特異性や道内での地域差に苦しむ北海道にとって、千載一遇のチャンス。データに基づいた地域供給ネットワークの協創に取り組みもう」と訴えた。

このほか、明治大学の橋本雅隆教授、カスミ営業統括本部の齋藤雅之SCM担当マネージャー、イオン北海道の石田将物流改革マネージャー、流通経済研究所の加藤弘貴専務らが、PI構築に向けた考えや取り組みなどを紹介した。

また、会場にはPI構築に資するサービスとして、souco、Tsunagute、ティー・エル・エス、アセンド、JR貨物、traevo、Next Logistics Japan、日本パレットレンタル、センコーの各社がブース出展し、それぞれのサービスを紹介。道内からは北海道物流開発、幸楽輸送、北海道開発局が出展した。

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